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神経生物学研究室では

​当研究室では、チャコウラナメクジを用いて、軟体動物腹足類の脳神経系が持つ、優れた能力を研究しています。ナメクジの脳には数10万個という、ヒトの10万分の1程度の数のニューロンしか存在しません。しかし、その脳にはヒトでは実現不可能なさまざまな能力が秘められています。以下の「研究テーマ」にその例を挙げます。

嗅覚忌避連合学習
​ナメクジは、食べてみて不味かったものの匂いを覚えることができ、学習するとその匂いには決して近づかなくなります。さらにこの記憶は、一回学習しただけで何週間も続きます。この学習記憶に脳をどのように使っているのか、行動学、分子生物学、電気生理学、組織化学の手法を用いて調べています。
​中枢神経系の再生
ヒトの脳は、脳卒中などで損傷を受けると、組織レベルで再生することはできません。しかし、ナメクジの脳は自発的な再生能力が高く、そのもっとも分かりやすい例が、切断された触角の再生です。触角先端部には、神経節や嗅上皮、眼などの神経組織が集まっており、これをゼロから再生することが可能なのです。また、脳自身も神経新生を介して失った部位を再生することができます。

研究テーマ

核内DNAの増幅
通常、動物の体細胞の核は、父母由来の1組のゲノムDNAから構成されています。しかし、ナメクジをはじめとする軟体動物腹足類の中枢神経系には、ゲノム全体を2倍、4倍、8倍・・・と倍々に増やすことで大幅にDNAを増やし、タンパク質などの物質合成能を高めているニューロンが多数存在します。このようなニューロンが何故どのようにできるのか、調べています
光感知機構
ナメクジは、暗い場所を好む性質(負の光走性)があります。そして、触角(大触角)の先端には眼が備わっています。この眼をどのように用いて暗い場所に行くことができるのか?、そして眼以外の器官で光を感知することはできないのか?といった点に着目して、研究を進めています。

チャコウラナメクジについて

当研究室では、2001年から継続的に閉鎖交配系で飼育し続けているチャコウラナメクジ(Limax valentianus)を用いています。以前は日本にいなかった外来種であると考えられていますが、今では国内のいたるところで見つけることができる農業害虫です。研究室で30世代目を超えた今でも、旺盛な繁殖力を示しています。

​研究室では一年を通じて、常時1000匹以上のナメクジを維持しています。これらを用いて、分子生物学、行動学、組織化学、電気生理学的手法により安定したデータを取得しています。

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